2010年10月31日日曜日

MBA 気になった質問

昨日飲みすぎて二日酔いで苦しい一日でした。と、いうことで、久しぶりにMBA関係の話。これまでキャンパスビジットなどでアプリカントの方とお話する機会が多くありましたが、その中で気になった質問を3つ、挙げてみました。

Q1. 日本人に求められているものは何ですか?
A1. 特にありません。ハードスキルに関しては、国籍よりも職業ごとの差の方が大きいです。ソフトスキルに関しては、日本人の一般的なイメージは(良いものも、悪いものも)ありそうです。が、授業・グループワーク・イベント等でどういう形で貢献出きるかは人それぞれです。それに、シカゴの場合だと大体3割~4割はインターナショナルなのですが、それぞれの生徒が「お国柄」を振り回したら大変迷惑ですよね。

Q2. MBAに行く人ってやっぱりお金儲けなんですか?
A2. 確かにオカネとか社会的地位とかへの関心が高い人は多そうです。が、それを超えて、自分が自分の人生をかけて何を成し遂げたいかというのを考えている人も多いです。またそういったことを考える機会とリソースも多いです。

Q3.  今アメリカに行く意味はあるんですか?
A3. MBAという分野では、アメリカは突出しています。が、アメリカの経済のプレゼンスは10年前と比べると相対的に小さくなっていそうです。アメリカに行く意味が見つけられない人は、無理しないほうが良いのかもしれません。僕の場合、途上国ビジネスや開発援助の世界ではアメリカはとても強いので、多くのことが学べています。が、現場に行かないと得られない情報も多いので、シンガポールとか上海とかに行ってみたりしているわけです。

関心を持っている特定のセクターの「本場」がアメリカで、それに関連した教育プログラムがある場合は、良いでしょうね。

と、いうことでした。

2010年10月25日月曜日

新興国投資事業のシナリオ分析

Financial Crisisがひと段落した今年、新興国投資が世界中で加熱しています。しかし、10年後に、日本発の新興国投資ビジネス(≒日本の資本、人材、技術をレバレッジした投資)はどういった形になっているのか、いやむしろ、存在しうるのか?その絵姿というのは必ずしも決定的では無いと思います。

このシナリオを考えるに当たっては、かなり沢山のリスクファクターを考える必要がありそうですが、その中でも、日本国内での新興国事業への関心度と、国際政治/国際マクロ経済の安定性、という2つの要素が不確かで、かつインパクトが大きいように感じます。


この表では、まず、一番左に新興国でのトレンドを挙げ、右の2列で、それぞれ、新興国事業への関心、国際政治/マクロ経済安定性の2要素の「説明変数」を挙げました。例えば、日本のビジネスパーソンの語学力が今後向上していくか、は、新興国事業への関心が高まるか、という論点に大きく影響を与えそう、といった感じです。ここで挙げた説明変数のうち多くは、今後どうなるかちょっと分からない要素だと私は思います。


さらに、上に挙げた2点をそれぞれ、縦軸・横軸に取って、4つのシナリオを考えたのがこの図です。左下のBusiness as Usualは、日本も世界も自国内の経済にリソース(人材・資金等)を割く、国境によって分断された古典的な国際経済です。このシナリオでは誰も損も得もしません。右下は日本だけがビジネスの国際統合に加わらず、沈没していく最悪のパターンです。

私のように新興国事業に関心をもっており、かつプロジェクトマネジメント系のスキルに偏った人間にとってみると、右上の新産業誕生シナリオが一番望ましいです。しかし、国際政治/マクロ経済が極めて不安定になった場合、個別の企業のファンダメンタルを向上して利益を得る投資モデルは成り立ちにくく、為替リスクや政治リスクに基づく裁定取引モデルが主要なビジネスモデルになるでしょう。この場合、マクロ経済とファイナンスのスキルを持った人がパッシブな投資で活躍する。

で、実際にどうなるか、というと、おそらく、この裁定取引モデルと新産業誕生モデルの中間くらいになるのではないかな、と思います。この場合、マクロ(国)とミクロ(企業)の双方をバランス良く見ることのできる事業体が成功するという総花的な結論になります。

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先週授業で習ったScenario Analisysというものを使ってアタマの体操をしてみました。そもそもこのプロセス、サイエンティフィックではなくて、かなりintuitiveです。恐らく、上に挙げたX軸とY軸以外にも色々な軸の組み合わせがあるだろうと思います。皆さん、考えてみてください。そして教えてください。

2010年10月24日日曜日

ソーシャルなるもの

これまで聞いた話や読んだ本を総合すると、「伝統的」なソーシャルビジネスと通常のビジネスとの違いは、極論すると、財/サービスの違いではなく、サプライサイドがどういう意図を持って財もしくはサービスを提供しているか、にあるように思えます。

これを図にするとこうなります。既存の事業をうまく表現する言葉が無かったので、あえて"Greed"としました。


DemandとSupplyの二つの円をあわせるとこうなります。


こうしてざっくりとセクターごとに見ると、双方から提供されるサービスの差はそれほど大きく無さそう、というのがしっくりくると思います。例えば、真ん中に位置する、水・道路といったインフラ、医療、ファイナンス等はSocial/Greedの双方から提供される財/サービスです。

但し、両者共に制約条件があり、地域・経済水準によって提供される財/サービスに違いがあります。Greedは、少なくともコストを上回る値段での買い手がいない市場では財/サービスを提供しません。あるいは、規模の経済がはたらく事業では、クリティカル・マスに達しない市場に参入しません。対して、Socialは、リソースに限りがあります。従って、全ての財/サービスが全ての人間にあまねく行き渡っているわけではありません。

従って、途上国の所得が低い層にとっては、こんな感じに見えるのではないでしょうか。


ということで、Socialの側も、Greedの側も、緑・オレンジに色が着いた枠を広げようと頑張っています。Social側からすると、緑の枠を広げていくことに社会的意義を見出していて、Greed側からすると、オレンジの枠を広げていくことでオカネがもうかるようになっています。この枠を広げる方法は、技術革新・事業モデルの革新など、色々あると思います(※この枠を広げること自体をソーシャルと呼ぶのが最近の社会起業だと思います)。

どっちの側に属していても誰かの生活を良くすることは出来そうです。でも、片側だけでは世の中は成り立たなそうです。そして、どちらの側にいるとしても、枠を広げる仕事というのが一番面白そうな感じがします。

2010年10月18日月曜日

DC trek その2

さて、前回の続きでDC trekで面白かった企業の話を書きます。

Microvest: Microtinance Institutionを対象としたFund to Fund。MFIの中から優良企業を抽出してDue Diligenceをして、Deal、というパターンはPrivate Equity (PE)と似ている。リターンやROEも教えてくれて勉強になった。最近はMFIを地域の商業銀行が買収するケースも増えているらしい。業界のトレンドとしては雨後の筍のように増えたMFIが淘汰されながら、CommercialでTraditionalなLendingとConvergeしていくのかもしれませんね。

Roschild: ロスチャイルドといえば財閥といった感じですが、ブティック系の投資銀行らしく、DCのオフィスはグローバルの資源関係のPFIを担当しているとのこと。資源関係のPFIは行政とも密接に関わるし、コンゴ民のような普通のビジネスではリーチしない国で事業を行う。ということで、ポリティカル・ソーシャルなリスクをいかにコントロールし、緩和していくかという話がアツかった。

GEF: 環境関係のビジネスに投資するPE。大手のPEと比べるとディールの平均額は低いのですが、アクティブに経営に入り込んでいる模様。さらに林業のように他ではやらないユニークな投資も取り扱っている。この林業の話が面白くて、10-12年の投資期間でアフリカの数カ国に投資しているとのこと。アフリカの森林は減少しているし、燃料・木材としての需要は大きいらしい。よく考えると木ってアセットとしては結構いけてるよな。今後のトレンドとしては、中国・ブラジルからの新興国に対する投資の増加を挙げていた。

このほか、AESという電力関係の投資(+事業)会社も訪れたのですが、セクター特化型の投資事業は強いな、と感じました。逆に今回訪れたようなアメリカに本社をおき世界中に投資する企業では特定地域への特化は難しいわけで、何が差別化要因になるかというと特定セクターへの専門性なんでしょうね。

2010年10月17日日曜日

DC trek

DC trekに行ってきました。これはEmerging Markets Groupのイベントのひとつで、15人くらいのグループでDCの途上国投資企業を数社、訪問するというものです。グループの日程は15日のみなのですが、僕は16日も滞在して知り合いや前職の先輩を訪問することに。9つの訪問先を回り、非常に充実した2日間になりました。

Emerging Markets業界、というのは、日本では存在せず、大企業や大手金融機関の事業の一部として存在するのみ(そして多くの場合出世コースではない)ですが、米国ではDCやNYにEmerging Marketsを中心ターゲットとした企業・ファンドが多くあります。マクロな背景としては、米国の盛んな起業熱に加え、産業構造の違い(日本のように垂直統合型ではない)が挙げられるでしょう。そんな中で、オルタナティブ投資や高いイールドを目的とした資本がこうした企業・ファンドに集まるのも不思議ではありません。

と、いうことで、Microfinance Insutituteから国際機関まで、多くの企業/組織に話を聞き、業界の最新のトレンドやキャリアディベロップメントの仕方を学んできました。グループの活動以外の、個人で取ったアポ先での議論もアツかった。キャリア関係で大学生の頃から長い間相談に乗ってもらっている先輩に5年ぶりに会って(電話やメールは頻繁にしていたんですけどね)今後の進路の話をしたり、前職の大先輩と国際協力に関するアツい話をしたり…。

この1年でDCは3回目なのですが、DCに来るといつも自分の「原点」が何かを思い出させられます。自分が目指すものは何か、そしてそこに至るために不足している能力は何か…。1年前にトレックに参加したときは、アメリカの企業に行くこと自体初めてで、質問するのも凄く緊張していて、2度目に冬に行ったときは、キャリアに関して限り無い迷走の中にいた。そんな1年間を経て、コミュニケーション能力、業界に関する知識、ネットワークのどれをとっても、大分進歩したなと感じます。少しずつですがキャリアビジョンもはっきりしてきたし。シカゴのパワフルな街並みから離れて端整なDCの街を歩きながら、そんなことを思っていました。

そんな感じで、最近大分調子が良いのですが、道は険しい。まだ2合目も見えていない感じだな。

ということで、個別企業の面白かった話はまた次回。

2010年10月11日月曜日

Cleantech Labが面白い

どうも、またまた日が空いてしまいました。2年生になってシカゴ生活に大分なれて来たものの、授業はどんどんハードになるし、グループの活動も仕切らないといけないので、結局大変さという意味では去年と変わらないような気がします。

MBA2年目では、アントレプレナーシップとインフラがらみのハイテクを深めたいと考えており、これが将来新興国に切り込んでいくに一番の近道じゃないかと何となく予想しています。ということで取った授業の中で、これは大当たりだな、と感じているのが、Cleantech Lab。イリノイ工科大学(IIT)の教授と一緒にバッテリー関係のプロジェクトをやっています。

IITの教授も、クラスの指導教官もクリーンテック業界に関する知見が深く、話しているだけで面白い。前職からそうでしたがエンジニア関係のプロと話すのは結構好きなほうだと思う。それから、チームの中ではプロジェクト全体の構造や計画を立てる役割を何となく担っているので、これもいい経験になる。ここにきて、ようやく自分の成長を実感できている感じです。

ところでIITのキャンパスはミース・ファン・デル・ローエ大先生により設計されたもので、広大な敷地の中に鉄とガラスでシンプルに作られた構造物が散在していて結構格好いい。そのうち写真アップします。

なんだかどんどんEmerging Marketsから離れていくようでもう少し時間をつぎこみたいのですが、今週末はまたDCに行ってきます。そこであらためて情報収集。