2010年2月26日金曜日

経済成長を測定する?

朝の9時から夕方の5時まで、Measuring and Analyzing Economic Developmentというのに出ていました。

よくnon-profitのホームページなんかで「1日1ドル以下で生活する人が世界には○○人います」みたいなことが書かれていますが、途上国の人々の生活水準を測り、通時的な変化を見るのは非常に難しい。一人当たりGDPというのは分かり易いが、国・地域毎の物価の相違、生活に必要な基本的なモノ・サービスの相違、幸せの尺度(≒効用関数)の相違を考慮しないといけないし、そもそも1人当たりGDPと家計消費は違うので、少し工夫したほうが良さそうである。特に家計消費の量や文化が大きく異なる国の間の比較をする場合は尚更である。

と、いうことで、特に低所得者層に関しては、カロリー摂取量の比較研究なんかが行われていたりするのだが、まぁより一般的な方法は途上国の家計の名目上の支出、物価の調査・集計を行い、これを地域や国の間で比較する、という方法である。まぁ購買力平価などですな。但し、例えば物価指数を作る場合でも、どういった商品を対象にしてどういったウェイトを置くかが難しかったり、そもそも家庭菜園の野菜の値段をどうつけるのか良く分からなかったりする。さらに比較対象の時間軸や対象とする地域を広げれば広げるほど、この問題は面倒になる。

そんなの大した問題じゃない、という考え方もありますが、この業界で一番良く使われているPenn World Tableの最新版と旧版を比較すると驚くほど異なる分析結果が出るらしい。例えば、それぞれのデータから1975年から99年のアフリカ各国の経済成長率のランキングを作ってみると、旧版では下位5カ国に位置していたギニアビザウが新版では上位5カ国にランクインしてしまう、というくらいextremeなお話もある。

じゃあどうすれば良いのですか?というのが今回のカンファレンスの主題。ここ20年くらいの間、途上国での家計調査が盛んに行われており、それを用いたミクロ経済分析が最近の開発経済学の主流。僕が日本の大学院でパソコンを使ってごちゃごちゃやっていたこともそういったことなので、かなりドツボにはまるカンファレンスでした。

面白かったのが、Kevin MurphyとAngus Deatonの議論。Kevinの主張は、「そもそも家計データ使ったミクロ経済分析自体、始まったばかりで、一地域の分析のみからでも得られるものは多いし、(経済成長という文脈においても)ミクロ経済学というのは優れたPredictorである。生活水準の比較なんていうのははっきり言ってリソースの無駄にしか思えない(とマジで言っていた)」、というもの。対して、Angusは、多国間で比較できる指標が無いと、我々はアフリカの現状を知るにあたり、U2のボノの見聞録に頼らざるを得なくなるではないか、と主張(一同笑)。

そもそも経済成長を測定しましょう!というお題目の会議でよくまぁそこまで言うな、と思うけど、一日中研究者の間でフランクな議論が展開されていて、非常に面白かった。休み時間にはいきなりスクリーンの裏のホワイトボード使って議論を始めるし(下の写真)。まじでかっこいいです。アツいです。


僕にとっての課題は、これをどうやって使っていうか、というところで、まだあまりしっくりくる答えは出ていません。

ちなみに、アマルティア・センとかが言っているのはこの議論のさらに先を行くお話。あと、実際に世界銀行やIMFでは一人当たりGDPというのが意思決定の中心にあります。これは「未だに」というべきなのかは分かりません。

2010年2月23日火曜日

ひと休み

ちょっとどたばたしているせいでじっくりとブログのトピックを考えることが出来ません。今週を含めて冬学期もあと三週間しかないということで、俄かに時の経つのは早い。最近のブースはこんな感じです。上がHarper Centerで下がダウンタウンにあるGleacher Center。天気がいい日は最高に居心地が良い。

Gleacherの2階ラウンジから。左がシェラトン。その先にミシガン湖が見えます。下を流れるのがシカゴ川。もう氷は解けました。今年は暖冬らしいです。

2010年2月18日木曜日

EMG Co-Chair!!

昨日連絡があって、Emerging Market Groupという学生グループのCo-Chair(共同代表)に選ばれました。

いやぁ、うれしいですね。これで、Boothの学生を巻き込んで学外でのネットワーキングや、学内での勉強会の企画をどんどん立てることが出来ますし、一緒にCo-Chairになった人達は、途上国ビジネスのプロになろうという熱い人ばかりで、一緒に仕事をするのが楽しみで仕方ない。さらに言うと、こういう選考プロセスでネイティブに勝てたこと自体が、素晴らしい。アメリカというのはそういう意味で寛大ですな。

まぁ、ぶっちゃけ、コミュニケーション能力に関してはさらに磨きをかけないといけないな、というプレッシャーがあります。シカゴに来てから、自分の出来るレベルの二段階くらい上の課題を常に与えられ続けている感じですが、自分の求めている2年間でのゴールを考えると、そのくらいのストレッチは必要で、またそれが楽しくもあります。まぁ基本的にMですので。

とにかく祝ってください。

2010年2月13日土曜日

故郷に錦を飾る: Remittance 2

と、いうことで、前回はやや中途半端なところで終わってしまいました。とはいえ立派な結論があるわけではありません。従って、投稿する気が失せていたのですが、何も投稿しないのも気持ち悪いので、語尾をですます調に変えて投稿することにしました。

とにかく、最近考えているのは、農業生産・資源輸出と送金で成り立っている国と、製造業やサービス業でも稼げる地域の経済中心国との二極分化と、言語・文化の相違によるブロック化が今後加速するのではないかということです。これは決して悪いことではなく、おそらくアフリカの成長シナリオとしては唯一ありえるものなのではないかと思っています。

この場合、内陸国でとりうる政策と、成長が望める国とでとりうる政策、国際機関やドナーの方針というのも自ずと変わってくるのではないかと思います。政策的には内陸国は潔く諦めて「教育県」を目指すということです。ビジネスとしては送金システムのインフラが不十分らしいのでそこが狙い目。

Counterargumentとして、アフリカが外貨を稼ぐには農業と資源の輸出しかないのでアフリカ域内のブロック化は起こらない、という論点があると思います。あとは移民というのは昔から問題の種になっています。この話なんかは有名です。それから政策的にそんな割り切りが出来るかというと程度の問題ですが限り無く困難でしょう。もちろん、送金以外の経済活動のトランザクションも考えないといけません。

色々とこの話について調べたところ、すでに膨大な量の研究がなされています。ここなんかを参考にしてください。本当は内陸国がどういう政策を取れるのかを議論したかったのですが、考えれば考えるほど、如何に選択と集中が難しいかを思い知らされ、諦めました。そのあたりは、ビジネスケースとは様相が違います。

2010年2月10日水曜日

アメリカ人が寄付する理由

すでにご存知の方も多いかもしれませんが、アメリカでは個人レベルでのNon-profitに対する寄付が盛んらしいです。多分その理由は以下の3点だと思います。

1.文化的な背景
アメリカでは古くからコミュニティに対する金銭面での貢献がオープンにappreciateされていると思います。東大の安田講堂みたいに、人の名前のついた公共施設が沢山あります。履歴書や人物評においても、社会貢献活動は必ず評価され、仕事だけではなく社会問題に関心が高いことがエスタブリッシュメントの前提条件になっています。借金を背負って勉強しているMBA生の間でも盛んに寄付活動が行われています。私は借金をしている人がDonateするのは意味不明だと思っているのですが。

2.金持ちの多さ
恐らくはアメリカの大金持ちの数、所有する資産の量は日本に比べて圧倒的に多いので、それが寄付の量の多さにつながっていると思います。

3.免税
アメリカのほうが、寄付金が免税の対象となる機関が多く、他方で日本では住民税の控除の対象となる認定NPO法人の数が限られているなど、免税可能な寄付をするのが難しいらしいです。詳しく調べると結構難しい。時間のある人はこのHPをご参考にしてください。

http://www.mof.go.jp/f-review/r65/r_65_074_092.pdf

p18の価格弾力性と所得弾力性の話は実に面白いです。詳しい分析の仕方が気になりますが。

さて、ここ20年程度で、日本でも上の1.~3.が満たされるでしょうかね?経済の見通しの悪さ、社会保障問題、政府の累積債務を考えると、わたしはかなり否定的な見解を持っています。所得税率がアップして寄付したほうがマシ、というシナリオは笑えないな。

日本も近い将来はアメリカと同じようにNon-profit大国になるか?という話については、アメリカのNon-profitがどの程度寄付以外の資金収集能力があるか、ということと、法人による寄付の仕組みも調べないといけないので、何とも言えません。

2010年2月5日金曜日

Chicago Boys

最近Investmentsというクラスに夢中です。CAPMとかまだ基本的なことしかやってないのですが、途上国経済を考えるにあたりどう応用するかを考えるのも楽しいし、多分計量経済の発想が自分にフィットしているんだろうとおもいます。シカゴの経済学は、やはり、すごい。特にファイナンスに関するこれまでのイノベーションの震源は間違いなくシカゴなわけで、今自分がそんな地に立って勉強していることににわかに興奮を覚えます。

金融工学者フィッシャー・ブラック金融工学者フィッシャー・ブラック
著者:ペリー・メーリング
販売元:日経BP社
発売日:2006-04-20
おすすめ度:4.0
クチコミを見る




この本を読むとシカゴかMITに行きたくなると思います。

最近は、Development Studiesにもしっかり触れていきたいと考えています。シカゴといえばセオドア・シュルツ、そしてChicago Boysですからね。2月の下旬にはEconomic Developmentのカンファレンスが開かれます。ノーベル賞学者のGary Beckerのパネルがあったり、あとはDeaton、この人の家計調査の本は参考にしました。他にもかなり有名な研究者も来るようで、アカデミズムに心が躍ります。しかしベッカーってもう80歳なんだよなぁ。日本で速水佑次郎のセミナーを聞いたことを思い出します。

開発経済学―諸国民の貧困と富 (創文社現代経済学選書)開発経済学―諸国民の貧困と富 (創文社現代経済学選書)
著者:速水 佑次郎
販売元:創文社
発売日:2000-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る




日本語で書かれた開発経済の本で、この本を上回る本は前にも後にもありません。途上国経済のプロになろうという人は是非読むべし。まぁ、ご当地自慢+昔取った杵柄で恐縮ですが。

2010年2月4日木曜日

Winter in Chicago

iGoogleで日本の天気をいつもチェックしているのですが、寒そうですね。東京は2月1~3日辺りが毎年寒さのピーク、という勝手な印象を持っていますが、それを抜けた頃に僅かな春の兆しが感じられるのが好きでした。シカゴは何となく、寒さのピークを超えたのかな、という感じです。2週間前は恐ろしく寒い日が続き、空も曇っていて死にたくなる感じでしたが、今週はどうやら0℃前後の日が続きそうで、まぁ東京と変わりませんな。北国なので日照時間の変化も早く、気持ちも若干は前向きになります。

何度も書いていますが、セントラルヒーティングが利きすぎるほど利いているので、朝、寒くて起きられないということは無いし、勉強していて体が冷えて死にそうになることも無かった。それから、秋にかったパタゴニアのダウンコートと日本で買ったユニクロのヒートテックタイツの組み合わせは最強でした。出来れば来年は防寒性のもっと高いパンツがほしいけどなぁ。そうすれば何も考えずに外をうろついたり出来るのに。

去り行く冬を若干いとおしく感じます。