朝の9時から夕方の5時まで、Measuring and Analyzing Economic Developmentというのに出ていました。
と、いうことで、特に低所得者層に関しては、カロリー摂取量の比較研究なんかが行われていたりするのだが、まぁより一般的な方法は途上国の家計の名目上の支出、物価の調査・集計を行い、これを地域や国の間で比較する、という方法である。まぁ購買力平価などですな。但し、例えば物価指数を作る場合でも、どういった商品を対象にしてどういったウェイトを置くかが難しかったり、そもそも家庭菜園の野菜の値段をどうつけるのか良く分からなかったりする。さらに比較対象の時間軸や対象とする地域を広げれば広げるほど、この問題は面倒になる。
そんなの大した問題じゃない、という考え方もありますが、この業界で一番良く使われているPenn World Tableの最新版と旧版を比較すると驚くほど異なる分析結果が出るらしい。例えば、それぞれのデータから1975年から99年のアフリカ各国の経済成長率のランキングを作ってみると、旧版では下位5カ国に位置していたギニアビザウが新版では上位5カ国にランクインしてしまう、というくらいextremeなお話もある。
じゃあどうすれば良いのですか?というのが今回のカンファレンスの主題。ここ20年くらいの間、途上国での家計調査が盛んに行われており、それを用いたミクロ経済分析が最近の開発経済学の主流。僕が日本の大学院でパソコンを使ってごちゃごちゃやっていたこともそういったことなので、かなりドツボにはまるカンファレンスでした。
面白かったのが、Kevin MurphyとAngus Deatonの議論。Kevinの主張は、「そもそも家計データ使ったミクロ経済分析自体、始まったばかりで、一地域の分析のみからでも得られるものは多いし、(経済成長という文脈においても)ミクロ経済学というのは優れたPredictorである。生活水準の比較なんていうのははっきり言ってリソースの無駄にしか思えない(とマジで言っていた)」、というもの。対して、Angusは、多国間で比較できる指標が無いと、我々はアフリカの現状を知るにあたり、U2のボノの見聞録に頼らざるを得なくなるではないか、と主張(一同笑)。
そもそも経済成長を測定しましょう!というお題目の会議でよくまぁそこまで言うな、と思うけど、一日中研究者の間でフランクな議論が展開されていて、非常に面白かった。休み時間にはいきなりスクリーンの裏のホワイトボード使って議論を始めるし(下の写真)。まじでかっこいいです。アツいです。
僕にとっての課題は、これをどうやって使っていうか、というところで、まだあまりしっくりくる答えは出ていません。
ちなみに、アマルティア・センとかが言っているのはこの議論のさらに先を行くお話。あと、実際に世界銀行やIMFでは一人当たりGDPというのが意思決定の中心にあります。これは「未だに」というべきなのかは分かりません。