2011年6月28日火曜日

Slow but Steady


シカゴを始めて訪れたのは3年前でした。本当は立ち寄る予定が無かったのですが、アメリカのMBAプログラムを幾つか訪問する中、空き時間が出来たので、ボストンから日帰りで、片道2時間の飛行機に飛び乗ったのです。

地下鉄に乗ってダウンタウンを通り、キャンパスに向かうまで、快晴のシカゴの街並みに、かつて無いほど衝撃を受けました。1800年代後半から、それぞれの時代の気鋭の建築家達が紡ぎ続けた不思議な調和―少なくとも、シカゴは、僕の訪れた他のどの街より魅力的でした。これまで、30数カ国を旅行し、もはや自分が感動できる街などどこにも無いと思っていたのですが。
 

経済学徒としてのシカゴ大への憧れはもちろん強かったですが、もしこの日、シカゴを訪れることがなかったら、シカゴが雨だったら、僕はシカゴ大に行ってなかったかもしれません。

そうして、数々の幸運な出会いに恵まれシカゴに合格し、2年が経ち、ついにこの街を出る時が来ました。

自分がやりたいと思ったこと、出来ると思ったことの全てが出来たわけではありません。楽しい!と思う時間より、悔しい、と思う時間のほうが圧倒的に長かったですし、どうすればよいか分からず、ひたすらもがいている時間が長かったように感じます。

ただ、その中で確信が持てたのが、自分なりに丁寧に物事を進めていけば、時間はかかっても必ず力はつくし、成果につながる、ということです。特に、仕事上のキャリアに関しては、もはや運としか言いようの無いような、例えば景気とか、意気投合できる人との出会いとか、自分ではコントロールできない荒波に耐えていく必要があります。しかし、そんな中でも自分の「カルマ」を信じ、戦略を立て、サイコロを振り続ける-チャレンジし続けることが、出来るようになって来たし、今後40年間、それをやり続ける自信と覚悟が出来ました。

そして、それを支えてくれる、素晴らしい友人との出会いがありました。シカゴに来る前に考えていたような「グローバルな環境下でのリーダーシップ」がついたかどうかは分かりません。ただ、一緒に新しい敵に立ち向かい、考え抜き、アクションを起こし、成果を分かちあうことの出来る、そんな友人に数多く出会いました。彼らとの繋がりは今後も続くでしょうし、これからもそんな素晴らしい出会いが世界中で起こりうるんだ、と思います。それであれば、日本の外でも、確実に、楽しく仕事が出来るな、と感じています。

今、アムステルダムに向かう飛行機の中です(※結局投稿はナイロビ)。これから、1ヵ月半、アフリカ・アジアの投資家や起業家を訪れ、将来の仕事への下準備をして、日本に戻ろうと思います。


と、いうことで、このブログはまだ終わりません。ですが、これまで、日本や、アメリカで、応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。皆さんがいなければ、ここまで来れなかったし、これから先進み続けることも出来ないと思います。引き続き、よろしくおねがいします!

2011年6月5日日曜日

マイクロファイナンスと多重債務

今度訪問するケニアのベンチャーで働かれる方(日本人)から、南アジアで起こったようなマイクロファイナンスによる多重債務等の問題はアフリカでも起こるのか、という質問を頂いたので、以下の通り回答しました。

---

御連絡ありがとうございます。非常に興味深い質問です。私は、
ケニア、もしくはアフリカにおいてもマイクロファイナンスに起因した多重債務等のトラブルは起こりうると考えています。

インド・バングラ等での多重債務に関しては、マイクロファイナンスのビジネスとしての有効性が急激に、そして過剰に世間に知れ渡ったことに起因すると思います。マイクロファイナンスは、借り手の債務返済能力の査定、担保等の取り方、債務不履行になった場合の対処方法などのルールを現地コミュニティの慣行にある程度フィットする形で作り上げ、借り手とコンタクトをとるスタッフのトレーニングを十分に行う必要のある、非常に多くの時間とコミットメントが必要とされるビジネスです。しかし、南アジアではムハマド・ユヌスのノーベル賞受賞などを受けて、急激にマイクロファイナンスに資本が投下された結果、しっかりしたビジネスモデルが出来上がる前に兎に角お金を貸してしまった、というのが実態ではないでしょうか。

対して、アフリカで多重債務等の問題が大きく取り上げられていないのは、おそらく、マイクロファイナンスがそれほど急速に浸透していないのと、比較的大規模な(審査能力がある?)商業銀行等が取り組んでいるケースが多いのと、担保の取り方やローンの徴収方法が違うからではないかと思います。例えば、ザンビアでは給与から源泉徴収の形で返済をするモデルがかなり広く浸透しているようです。政府もアクションを取ってはいると思います。確か昨年、ナイジェリアで政府がかなりの数のマイクロファイナンス機関に業務停止命令を出したと思います。ただし、こういった政府のアクションのインパクトは恐らく限られていると思います。

また、南アジアのマイクロファイナンス「ショック」は、かなり作り上げられたものではないかと思っています。そもそもアカデミックな研究でマイクロファイナンスが貧困層の所得を上げる、という結果がない(と理解しています)中で、マイクロファイナンスは貧困層を救う、というようなイメージが世の中に浸透してしまったのは何らかのマーケティング上のミスなのかもしれません。しかし、マイクロファイナンスが浸透する前は、貧困層は例えば地主などから非常な高利でお金を借りていたわけですし、多重債務等の問題は多くあったと思います(確かそういった研究は開発経済学の分野でかなりあると思います)そういった人たちに対して新たな資金源へのアクセスを与えるという点で、マイクロファイナンスの功績は非常に大きいものであると私は考えています。また、途上国で何らかのスキャンダルを作り上げて、ネガティブマーケティングをするのは非常に容易です。幾つかの悪いストーリで、マイクロファイナンス全体があたかも悪いかのように取りざたされてしまっているのは、残念です。

マイクロファイナンスの資金の流れは、投資家→銀行→借り手、という風になると思います。銀行から借り手へのフローに関しては、不十分な査定に基づく貸付を続けていると、銀行自体が多量の債務不履行を抱え損をしてしまいます。ファイナンスという商品は借り手にとって非常に分かりにくい商品ですので、借り手への教育というのは重要だと思いますが、長期的にみるとこのフローはある程度安定するのではないかと思います。また、政府も利子率の上限は定めていると思います。他方で、投資家(ソーシャルにせよ、コマーシャルにせよ)から、銀行への資金フローが、銀行のキャパシティを超えたものにならないか、というのが中長期的には大きな課題になるかもしれません。恐らく第三者によるマイクロファイナンス機関の査定などでグローバルなスタンダードがあるのではないかと思いますが、ここの資金フローをコントロールするのは、難しいかもしれません。また、アメリカではMicrovest等、マイクロファイナンス機関の査定をするファンドがあって、そういう仲介機関を通しての融資が一般的になるのかもしれません

とりあえず、私もまだしっかり勉強していないので、ケニアで色々な方とお話をする中で、もう少し知見を深めていきたいと考えています。

---

最後に書いたとおり、私も勉強不足ですので、誤ったところがあったら教えてくださいねー。