2010年5月1日土曜日

中国発 新たな価値体系(2)

さて、前回の続きです。もしも僕が途上国の元首であったら、恐らく中国にまず飛んで教えを請うのでは無いかと思います。日本の政策転換・経済成長といえば、(1)江戸末期+明治と(2)高度経済成長期ですが、直近20年間の成長モデルではないので。まぁ、実際にラオスとかは高級官僚を政治教育のために中国に送り込んでいますが。

と、いうことで、中国の成長を支える行政の仕組みについて書きます。

(1)成果主義と競争
驚いたのが、中国の行政組織の徹底した成果主義。例えば地方自治体の長は、対象とする地域の経済成長率で評価されるらしい。より末端の行政サービス、例えば教育でも、学校の先生は担当学級の試験の点数の平均で評価される。「外部環境に大きく依存する政策や行政の評価は困難」、という反論がありそうだが、中国では恐らく個人の適正な評価ではなく、「如何に効率的に経済成長するか」が第一の目標で、その為に人事制度が存在するのだろう。誤差は切り捨てる。そしてこの仕組みを支えているのが熾烈な競争だと思う。

(2)明確な国家戦略
今回会ったビジネスパーソンの多くは、中国の第一の外交政策は「資源の確保」であると語っていた。数年前から中国のアフリカ投資は国際協力業界に風穴を開けて来たが、これからは南米にも進出していくということらしい。面白いのが、多くのヒトが同じことを語っている、という点。それだけ政策に一貫性があり、また、そのメッセージをちゃんと受け取ることで、儲けられる、ということだと思う。

(3)柔軟性
インフラ投資家達は、「世の中で一番流動性の低いアセット(=インフラ)に外国資本が注入されることを恐れるのは馬鹿げている。必要であればアセットを守るための法律なり何なりを定めておけばいいではないか。」という。まぁそこが政府側から見たPPPの難しいところだと思うが、中国は国が管理すべきイシューと、外資を入れるべきイシューの線引きをうまくやっているように見える。そして対応も柔軟で迅速。パートナーシップのとり方もうまい。例えばこんな会社と組んで、南米に投資している。

こういった行政の仕組みの背景には専制的な政治体制があることはいうまでも無いし、欧米の人権団体が色々文句を言うのも分かる。ただ、個々の施策から学ぶことは驚くほど多そうである。そして途上国ビジネスに及ぼす中国のインパクトは限り無く大きい。

2 件のコメント:

  1. そうそう、まさに同感。奴らはすげーよ、伸びる国は違うね、と思う。

    そしてそれを支えているのが、専制的でありながらなぜか腐敗しない、中国のトップ。
    普通、専制だと、トップがいつまでも地位を手放さなかったり、手放した途端次のトップにやられて裁判所送りになったりする。
    知識がないだけなのかもしれないけれど、江沢民の前後とかを見ていても、そういう動きが全くない。

    これが凄い不思議で、中国の本当にトップの人たちが、なんだかんだ言っても、「国のため」という高度な倫理観を保っているからじゃないか、と推測中。

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  2. なるほど。同感です。高い倫理観を持つリーダー層がいて成り立つ仕組みだよね。僕も彼らが高い倫理を維持するモチベーションは何か、考えていましたが、直感的には他の国との水平的な比較より、歴史的(垂直的)なアプローチのほうがしっくりくる。中国って、歴史的には、儒教(≒帝王学)というルールがあって、それに基づいてリーダーの実績を「正確に」後世に伝える、ことに高い価値を置いてきた国だよね。司馬遷なんかタマ取られても歴史を記述したわけで…。中長期的にはそういったビルトインスタビライザーがあって、今のリーダー達もその下で歴史を「作っている」という強い意識があるのではないか、と思うのです。

    逆に言うとそこが中国の中長期的なリスクだと思っています。焚書坑儒じみたことは頻繁に起こるわけだし、100年以上良い統治が続いたことは無いのではないかな。まぁ、仮に100年、と考えると我々が生きている間は中国の成長は続くのかな、という気がしています。短期的には、主席の交替と、土地バブルの崩壊がリスクですかね。あとは、社長が言っているようにクラウドだよね。中国ってクラウドによる新しいネットワーキングとイノベーションの真逆を行っている気がする。

    飲み屋のよた話みたいですみません。

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